神明クリニック

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コラム(2008年)

12月号長引く咳について
11月号新型インフルエンザについて
10月号脈圧について
9月号脳を刺激しましょう
8月号熱中症について
7月号脳卒中(脳梗塞や脳出血)にならないように
6月号不眠について
5月号長寿医療制度(後期高齢者医療制度)について
4月号骨粗鬆症について
3月号特定健診Q&A
2月号今、話題の万能細胞について
1月号慢性腎臓病が注目されています!

長引く咳について

クリニックに来院される患者さんは実にさまざまな症状を訴えられます。訴えを聞いていろいろな病気を鑑別し、診断することが内科医にとっては重要で、また私自身、最も興味を感じるところです。その訴えの中でもよく聞かれるのが長引く咳で、例えば、「かぜは良くなったけど、咳がひどくなってきた」とか、「毎年この時期になると咳がでる」などです。

さて咳が長引く場合、どのような病気が考えられるかといいますと、

(1)かぜ症候群後遷延性咳そう
かぜの症状に続いて咳がみられ、数日から2~3週間程度であれば、かぜ症候群後遷延性咳そうが考えられます。
これは障害された粘膜が修復される際に一時的に過敏になっている状態で、ちょっとした刺激で咳が誘発されます。中枢性の咳止めや漢方薬、ステロイドの吸入などが有効ですが、日にち薬で、そのうちに治まります。
(2)咳喘息
3週間以上痰をあまり伴わない咳が続く場合に比較的よくみられるのが、咳喘息です。
喘息といっても、気管支喘息のようにヒューヒューと音は聞こえません。気道の過敏性が亢進した状態で、かぜが誘引になることもあるため、先に述べたかぜ症候群後の咳が、更に長引く場合には咳喘息を考えなくてはなりません。またタバコの煙や黄砂なども原因になります。治療は気管支拡張薬やステロイドがよく効きます。薬がよく効くため、薬の効果で診断できる場合もあります。
(3)アトピー咳そう
咳喘息と鑑別が必要な病気がアトピー咳そうです。
症状は咳喘息と似ています。これはもともとアレルギー体質があり、明らかにアレルギーが起こっている場合(血液検査などで確認できます)に診断されます。また咳喘息には効果のある気管支拡張薬が無効であるため、これも診断の助けになります。治療は抗ヒスタミン薬やステロイドが有効です。
(4)副鼻腔気管支症候群や後鼻漏による咳
痰を伴った咳が8週間以上続く場合は副鼻腔気管支症候群や後鼻漏による咳が考えられます。
これは副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる鼻汁が原因で咳がみられます。治療は副鼻腔炎およびアレルギー性鼻炎に対する治療が有効です。
(5)胃食道逆流症
胃酸が食道へ逆流すること(胃食道逆流症)でも咳が続くことがあります。
喉や気管支まで逆流することで咳が誘発されます。胸やけなどの症状を伴うこともあり、また内視鏡検査で診断できますが、異常がない場合もありますので、胃食道逆流症の治療で咳が消失すれば、胃食道逆流症が原因と考えてよいでしょう
(6)その他
アレルギー性気管支炎(主に子供)や薬剤性、肺癌、結核、間質性肺炎などがあります。

皆さん、咳が長引く場合は是非参考にしてみて下さい。

いきいき生活通信 2008年 12月号

新型インフルエンザについて

WHO(世界保健機関)が9月に発表したデータによると、世界中でこの夏までに、鳥インフルエンザウイルスに感染したと確認された人は387人で、そのうち実に245人が亡くなっています。インドネシアやベトナム、エジプト、中国など15カ国以上で感染者が確認されており、またその高い病原性を持った鳥インフルエンザウイルス自体はアジア・ヨーロッパを中心に広がりをみせていて、制圧は困難な状況となっています。

日本でも2004年に山口県で高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認され、その後、京都府、茨城県そして宮崎県で確認されています。今のところ、鳥から人への感染効率は低く、感染した人のほとんどは、感染した鳥と直接的に密接な接触がある場合にみられています。また人から人への感染は、疑い事例はあるものの、確定しているわけではありません。

しかし、もしこの鳥インフルエンザウイルスが変異を起して、人にも簡単に感染することができるようになれば、どうなるでしょうか。
致死率が60%近くにもなるこのウイルスが、例年みられるようなインフルエンザと同じように流行すれば、世界中でたくさんの人々が亡くなるでしょう。さらにインフルエンザウイルスは変異を起しやすく、歴史的な観点からみると、そろそろ新たなインフルエンザウイルスが出現すると予測されています。鳥インフルエンザが新型インフルエンザとなるのも時間の問題かもしれません。

では実際に新型インフルエンザが流行したら、皆さんはどうすればよいのでしょうか。
マスクの着用、外出後の手洗い、人混みへの外出を控えることなどは、これまでのインフルエンザの感染予防と同じですが、テレビやラジオで流行の状況をよく把握して、場合によっては数日間外出を控えることも必要になるかもしれません。
またワクチンについては現行のワクチンではおそらく効果はなく、新型インフルエンザが鳥インフルエンザウイルスの変異によるものであれば、国が備蓄してあるワクチンが使用されることになります。発症が疑われたり、診断が確定している場合は、入院が望ましく、できるだけ早期に抗インフルエンザウイルス薬(タミフル、リレンザ)による治療が必要になります。皆さん、新型インフルエンザは要注意ですよ。

いきいき生活通信 2008年 11月号

脈圧について

普段診療をしていると、患者さんから「下の血圧が低すぎるが大丈夫か」とか、逆に「下の血圧が高いがどうすればよいのか」といった相談を受けることがあります。
仮に血圧が140/90mmHgであった場合、上の血圧は140で、下の血圧は90となりますが、下の血圧とは心臓が拡張したときの血圧のことを意味しており、正確には拡張期血圧といいます。(上の血圧とは心臓が収縮したときの血圧で収縮期血圧といいます。)

では下の血圧(拡張期血圧)が低い場合や高い場合はどのようなことがいえるのでしょうか?

一般的に血圧は加齢に伴って上昇します。50歳代までは上の血圧ほどではないにしても、下の血圧も上昇していきます。しかし、50歳代以降は上の血圧は更に上昇していきますが、下の血圧は変わらないか、あるいは減少していきます。これは、加齢に伴って大動脈が硬くなることと関係しています。すなわち、下の血圧が下がりすぎている場合は、大動脈が硬くなっており、動脈硬化が進んだ状態である可能性があります。この場合は状況にもよりますが、検査を受けて、動脈硬化の程度を評価してみたほうが良いでしょう。

一方、上の血圧に比べて下の血圧が高くなるのは、高血圧の経過の初期にみられることが多く、50歳以下の方や肥満、運動不足、喫煙、塩分の過剰摂取などが関係しています。したがって、生活習慣の改善によって良くなる可能性が十分にあるということです。

ところで、この上の血圧と下の血圧の差は脈圧といって30~40mmHgぐらいが理想的とされています。脈圧が増大するとうことは、先に述べたように、動脈硬化が進展している可能性があり、また上の血圧の上昇は心臓への負担を大きくし(心不全)、下の血圧の低下は心筋への血流不足(狭心症や心筋梗塞)をもたらすと考えられています。

このように脈圧の増大は血管の老化や心疾患と関係があるのです。皆さんの脈圧はどのくらいですか?

いきいき生活通信 2008年 10月号

脳を刺激しましょう

大学生の頃に、不勉強だった私は同級生から"人間の脳細胞は20歳を過ぎたら減る一方だから、今勉強しておかないといけない"と言われて、少し焦りを感じたことがあります。確かに学生の頃と比べれば、明らかに記憶力が低下しているなと実感する今日この頃ですが、皆さんはいかがでしょうか。

実際に人間の脳細胞(ニューロン)は成熟した後は一日に10万個程度減少するそうです。これは大変なことだと思うのですが、もともと脳細胞の数はものすごく多いので、それほど大きな問題ではないそうです。脳の機能にとって重要なことは脳細胞どうしで情報を交換したり伝えたりする情報網(シナプス)をいかに密に張り巡らされているかということらしいです。そしてこの情報網をつくる機能は年を重ねても維持されるそうです。

この情報網を新たに作ったり、変えたりするには、脳を刺激することが大切で、例えば、筋肉は使わなければ衰えていきますが、脳も同じようなことで、使わなければ衰えていくのです。ですから普段から新聞を読んだり、テレビを見たりする時も、ただなんとなく読んだり見たりするのではなく、それが些細なことであっても、常にそこからなにか情報を得ようと思って、読んだり見たりするのとでは脳の衰えが違ってくると思います。

偉大な数学者であったパスカルの残した言葉に"人間は考える葦である"という言葉があります。
人間は大自然の前では弱くはかない生き物に過ぎないが、考えることができる人間には無限の可能性があるという意味で私は理解しているのですが、もちろん考えるといってもパスカルには到底及ぶはずもありません。また頭を使うのはエネルギーのいることですので、常に頭を働かすことはできませんが、普段からの心がけひとつで、脳を衰えにくくすることができると思います。そして何よりも脳を刺激することは、認知症の予防になるのです。

いきいき生活通信 2008年 9月号

熱中症について

いよいよ甲子園での高校野球が始まりました。一生懸命に白球を追いかける姿は無条件に感動します。
毎年この時期になると20数年前に仲間と一緒に白球を追いかけていたころが懐かしく思い出されます。私が野球をしていたころは、練習中に水を飲むことは、いけないことで、我慢が足りないとか、水分を摂取することで余計に汗をかいて喉が渇くといった考え方がありました。私自身もそう思っていました。中学2年生の夏に一度だけ練習中に倒れたことがあります。その時は体力がないからだと思っていたのですが、今考えると、熱中症で失神したのかなと思います。
熱中症は高齢者や幼児だけとは限らず、どなたでも条件がそろえば、発症する可能性があります。

熱中症の症状は筋肉の痙攣や数秒程度の失神といった症状(軽度)からめまい感や嘔吐、血圧低下といった脱水症状によるもの(中等度)、更に意識障害や呼吸困難などの重篤なもの(重度)まで段階的に分かれています。重篤な状態になると死亡の危険性が高いため、初期の段階で対処することが重要です。軽度であれば、涼しいところで体を冷やし、スポーツドリンクなどを摂取させて様子を見てください。中等度であれば、医療機関で点滴などの処置を受けたほうが良いでしょう。重度であれば、急いで救急車を呼んで下さい。

またこれらの熱中症予防ですが、普段から体調には気をつけて、寝不足や風邪気味などで、体調が良くないと思うときは、決して無理はしないようにしましょう。そして汗をかくことで失った水分と塩分は速やかに摂取することが大切です。スポーツドリンクが好ましいのですが、お茶に塩を混ぜたり、あるいは飲みやすくするために砂糖などを更に加えても良いかと思います。

最後に体温は上昇しないこともありますので、今の時期に様子がおかしいと思ったら、熱中症も疑って下さい。

いきいき生活通信 2008年 8月号

脳卒中(脳梗塞や脳出血)にならないように

私の父は来春で70歳になりますが、毎日よく歩いています。感心するほどによく歩いています。実は、父の身内(私の身内でもありますが)には脳梗塞の方が何人かおられ、その様子をまじかで見てきているので、自分はそうなりたくないと思っているようです。私の父と同じ思いの方はたくさんおられるのではないでしょうか。皆さんが最もかかりたくない病気の一つが脳卒中でしょう。では、どうすれば脳卒中にならないのでしょうか?

脳卒中になる原因は統計的にいくつかはっきりしているものがあります。年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、肥満などです。この中で、年齢以外は生活習慣の改善や薬物療法などで、コントロール可能なのです。すなわち、脳卒中の予防にはこれらの危険因子をできるだけ少なくし、そして良好にコントロールすることが重要なのです。私の父はこれらの危険因子を四つももっているので、薬を内服しながら、毎日頑張って歩いているというわけです。

ですから、脳卒中にならないようにするためには、まず自分自身に先程の危険因子がいくつ該当するか、そしてそれぞれの危険因子は良好にコントロールできているかを確認して下さい。コントロールが十分でなければ、どうすればコントロールが良くなるのか、病院などで相談して下さい。また動脈硬化を評価する検査として、頚動脈エコーや脈波伝播速度(血管年齢)があります。頚動脈エコーは脳へつながる頚動脈を超音波で観察し、動脈の狭窄の程度や血管壁の厚さを調べる検査です。

一方、脈波伝播速度は文字通り、心臓から送り出された脈波が伝わる速度のことで、血管が硬いほどその速度は速くなりますので、血管の硬さが推定できるわけです。これらの検査はいずれも簡便であり、また脳梗塞を発症しやすい傾向にあるかどうかの参考にもなりますので、皆さんにおすすめの検査です。

皆さん、脳卒中にならないように、まず危険因子の評価をしてみて下さい。

いきいき生活通信 2008年 7月号

不眠について

眠れない夜はなかなかつらいものですね。なんとか眠ってしまおうと、気持ちを落ち着けますが、逆に自分の心拍を強く感じたり、あるいは体を熱く感じるようになり、結局ほとんど眠れずに夜があけてしまいます。最近はこういう場合は無理に眠ろうとせず、テレビをみたり、本を読んだりして、できるだけリラックスするようにしています。少なくともイライラ感は軽減されます。

ところで、日本人成人の5人に1人は不眠を自覚し、20人に1人は睡眠薬を服用しているそうです。普段診療をしていると、不眠を訴える患者さんは非常に多いと実感しています。不眠症状が短期間であれば心配ないのですが、たいていは長期間続いており、生活にも支障を来たしています。眠れない理由を尋ねると、特別な原因がないことも多く、あるいは回避できないストレスであったり、不安感だったりします。

そもそも人間の体には脳や皮膚、そしていろいろな臓器に体内時計なるものが存在しており、朝目覚めると、光によって体内の時計がリセットされ、日中は活動的に過ごせるようになり、そして暗くなってくるとメラトニンというホルモンが分泌され、眠たくなるようにできているそうです。この体内時計が寝だめや昼寝、あるいは夜に強い光を浴びたり、緊張状態などによって乱れると睡眠障害が起こります。

ですから体内時計を正常に保つことが不眠に対して重要です。不眠で困っている方は以下のことを実践してみて下さい。

  • (1) 眠れなくとも毎朝同じ時間に起床する。
  • (2) 朝起きてから光をたくさん浴びる。
  • (3) 昼間はできるだけ外出し、人と話しをするようにする。
  • (4) 昼寝は30分以内にする。
  • (5) 夜遅くにたくさん食べないようにする。(腹の体内時計が乱れます。)

これでも改善できないのであれば、睡眠薬を使用したほうが良い場合もあります。そして睡眠薬はできるだけ必要最少量での内服にしましょう。

いきいき生活通信 2008年 6月号

長寿医療制度(後期高齢者医療制度)について

皆さんもご存知かと思いますが、この春から75歳以上の高齢者の医療制度が変わりました。これまでの老人保健制度と比べて何が違うのか要点をまとめてみますと、ひとりひとりが保険料を納めることになります。これまで扶養家族扱いのため、保険料を納めていなかった方も負担しなくてはいけません。(2年間は軽減措置や特別措置が用意されています。)

保険料は介護保険と同様に年金からの天引きになります。したがって年金の手取り額が減ることになります。この医療制度は各都道府県に設けられた後期高齢者医療広域連合という新組織によって運営されますので、これまで国保や社保に納めていた保険料も広域連合に納めることになります。納める保険料は各都道府県によって異なり、また個人個人の年金などの収入によっても違います。

各県で75歳以上の高齢者にかかった医療費の1割をその県に住む75歳以上の高齢者で負担することになるのです。保険料は原則年金からの天引きですが、保険料を現金で納める方もおられます。もし一定期間滞納した場合、保険証を取り上げられ、資格証明書が発行され、一時的ですが、医療費を全額負担することになります。

制度はこのように大きく変わるのですが、皆さんの病院での窓口負担はこれまでと変わりなく、また高額医療費の支給も同様です。安心して下さい。最後に、どうしてこの制度ができたかといいますと、高齢者にかかる医療費は現在、全体の医療費の約1/3で、政府はこの医療費をなんとか減らしたいというのが本音です。

この制度を作ることで、今後ますます増えるであろう75歳以上の高齢者にかかる医療費を抑制しやすくなると考えられます。医療費が増えれば、負担する保険料も増えると予想されます。あまりに厳しくすると、必要な医療も受けられなくなる可能性があります。この制度、わかりやすくて良いなと思うところもありますが、高齢者の方が不安なく必要な時に必要な医療を受けられるような制度になって欲しいと願います。

いきいき生活通信 2008年 5月号

骨粗鬆症について

皆さんは【骨】という言葉で何をイメージしますか?私の場合は犬がかじっている骨でしょうか。そしてそれは、白くて、硬くて、細長い棒状のものというイメージになります。少なくとも、このようなイメージからでは、骨の中で絶えず、ダイナミックな出来事が起こっているとは想像できません。

実は骨の中では常に、破骨細胞によって骨が壊され(骨吸収)、骨芽細胞によって骨が作られているのです(骨形成)。このような骨吸収と骨形成による新陳代謝が常に繰り返されているわけです。

しかし、加齢や閉経などにより相対的に骨吸収のほうが優位になると、骨密度が減少し、結果的に骨折しやすい状態になります。この状態が骨粗鬆症です。

現在、骨粗鬆症患者は年々増加しており、1000万人以上と推計されています。骨粗鬆症の主な症状は椎体の圧迫骨折で腰や背中が曲がったりすることによる痛みや、転倒して大腿骨頸部が骨折して寝たきりになったりすることです。このような辛い思いをしないためにも、骨粗鬆症の早期発見・早期治療が重要になります。

早期発見には骨量測定が非常に有用です。そして骨量の減少がみられたら、治療を始めて下さい。

治療は主に
①運動療法、②食事療法、③薬物療法 に分かれます。

  • ① 運動療法では有酸素運動や体を伸展させる運動をして下さい。適度な運動負荷によって骨量が増加するといわれています。
  • ② 食事療法ではカルシウムやビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)を中心にタンパク質やマグネシウム、ビタミンC・Kなどを十分摂取して下さい。牛乳・乳製品や大豆製品がおすすめです。
  • ③ 最後に薬物療法ですが、骨吸収を抑制する薬が中心で、いくつかの種類があります。骨粗鬆症の程度や年齢など個々の状況によって使い分けられます。

皆さん、骨粗鬆症を軽く考えず、予防できることはしっかりと予防して、いきいきとした生活を送って下さい。

いきいき生活通信 2008年 4月号

特定健診Q&A

今回は4月から始まる特定健診についてQ&A形式で説明してみます。

Q: 対象となるのはどのような人ですか?
A: 40歳~74歳までの医療保険加入者(被扶養者も含む)です。ですからこの年齢の方はほとんどが対象者です。
Q: 必ず受けなければいけないのですか?
A: 必ずということではないのですが、特定健診では実施するのが医療保険者になります。医療保険者というのは私たちが加入している国民健康保険(国保)や政府管掌健康保険などのことです。そして今回からこれらの医療保険者が加入者に対して特定健診を実施するように義務づけられました。受診者数などが少なければ、その医療保険者には罰則が設けられています。したがって各医療保険者は加入者に対して強く受診を勧めるようになると思われます。
Q: 受診するにはどうしたらよいのか?
A: 国保の加入者は市から受診の案内が届くことになります。そしてあらかじめ登録されている医院や病院を受診して健診を受けます。国保以外の加入者は各医療保険者から案内があります。
Q: これまでの健診と内容が違うのですか?
A: 大きく違うのは腹囲の測定があることと健診の結果によって保健指導があることです。すなわちこの健診の目的はメタボリックシンドロームの該当者や予備軍を早期発見し、保健指導を行うことで、糖尿病などの生活習慣病を減少させることにあります。ですからメタボ健診とも言われています。
Q: 高血圧や糖尿病の治療を受けている場合はどうなるのか?
A: すでに服薬治療などを受けている場合は上記の保健指導は対象外です。
       
Q: 特定健診および保健指導の費用は?
A: 国保加入者は各市町村によって違います。明石市は現在協議中です。国保以外の加入者は各医療保険者によって違います。
Q: 75歳以上の高齢者の健診はどうなるのか?
A: 75歳以上の方は後期高齢者健診が行われる予定です。
Q: これまでのがん検診はどうなるのか?
A: 明石市では現在、国保加入者および希望者に対してがん検診を行っていますが、今後も変わりなく行われるとのことです。安心して下さい。

最後に特定健診の最大の目的は生活習慣病を減少させ、医療費を減らすことにあるのですが、このメタボ健診、皆さんはどう思われますか。

いきいき生活通信 2008年 3月号

今、話題の万能細胞について

骨髄移植を希望する全ての患者さんが移植を受けられたら、どんなに心強いことでしょうか。神経の損傷などで、車いすの生活を余儀なくされている患者さんが歩けるようになるのは、どんなにうれしいことでしょうか。小児期からインスリン治療を行っている重症の糖尿病患者さんの病気が治ったら、どんなにすばらしいことでしょうか。これらの夢の治療が私の中で少しずつ現実味を帯びてきています。

私が大学院生の頃からこれらの再生医療は非常に活発に研究されていましたが、私はどちらかといえば、冷ややかな目で見ていました。そんなことは不可能だろうと。再生医療において最も可能性のあるのはES細胞(胚性幹細胞)です。ES細胞は神経細胞や筋肉細胞、血液細胞などへと分化しうるおおもとの細胞であり、いずれ胎児へと成長していく初期胚から得られます。すなわち手を加えなければ初期胚はヒトになりうるわけです。したがって倫理的な問題があり、先進国ではES細胞の研究は限定的に認められている状況です。また、効率よく安全にES細胞を取り出す技術もまだ不十分でした。

ところが、もしこのES細胞が、私たちの皮膚から取り出した細胞(線維芽細胞など)から作ることができればどうでしょうか。倫理的な問題はありません。昨年秋に京都大学の山中教授らのチームがES細胞に似た細胞(人工多能性幹細胞)をヒトの皮膚の細胞から作ることに成功したのです。4つの遺伝子を皮膚の細胞に導入することで、いろんな細胞に分化しうる万能細胞に変化したのです。

この発表を受けて、再生医療は今後、この万能細胞中心に展開していくようです。もちろん、まだまだ乗り越えていかなければいけない問題はたくさんあるのですが、これからは熱い眼差しで応援していきたいと思っています。

いきいき生活通信 2008年 2月号

慢性腎臓病が注目されています!

現在、透析患者さんは毎年1万人前後増え続けており、500人に1人が透析を受けている状況です。このまま増え続けると医療経済的にも大変なことになります。また腎臓の機能が低下するほど心臓や血管の病気が起こりやすいこともはっきりとわかってきました。

そこで、腎臓の機能が少しでも低下してきたら(慢性腎臓病の状態)、しっかりと治療を行い、できるだけ進行しないようにしていきましょうということで、このたび、日本腎臓学会より私たち医療関係者に対して、診療ガイドが示されました。私自身も透析医療に携わっておりますので、普段から患者さんと話しをしていて感じていたことがあります。それは患者さんの多くが、かなり悪くなるまで腎臓病に対する認識がなく、透析が回避できない状態になって初めて、病気に対して自覚するようになることです。時すでに遅しです。これは患者さんだけの問題ではありません。私たち医療関係者がどのくらいしっかりと慢性腎臓病の患者さんに説明や治療を行ってきたのかという問題もあるのです。

このたび出版された慢性腎臓病に対する診療ガイドは非常に有用であり、私たち医師も本気で慢性腎臓病に対して取り組まないといけないと実感しております。

さて慢性腎臓病についてですが、慢性腎臓病とは3ヶ月以上腎臓の機能が低下した状態や尿蛋白陽性などの腎疾患を示す所見が続く場合と定義されています。腎臓の機能が低下する最も大きな要因は加齢なのですが、それ以外には高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙や血尿などがあります。

これらのリスクのある方は特に注意が必要です。診断は尿検査と血液検査である程度できますので、皆さんも検診などを利用して必ずチェックして下さい。そして慢性腎臓病と診断されれば、その原因も含めてできるだけ早く治療や指導を受けて下さい。

いきいき生活通信 2008年 1月号